明治維新後

明治維新後

財閥系商社の誕生

財閥を中心に貿易商社を設立

明治期以降、貿易商社が設立されていく。最初の総合商社は豪商三井家による三井物産。

財閥系商社期限は江戸期に発している。

明治維新後、新政府は西洋との圧倒的な国力の差を縮めるため、富国強兵をスローガンに自ら積極的に産業を起こす殖産興業政策を推進した。しかし、資源の乏しい日本がそれを遂行するには、原材料を輸入し、製品を加工・輸出して外貨を稼ぐ必要があった。

このような状況を受け、近代化のため貿易を外商から取り戻すべく、江戸期から活躍する財閥が中心となって貿易商社が設立されていく。

明治期の貿易商社は、その誕生の過程から財閥系商社と非財閥である繊維系商社、鉄鋼系商社の3つに分類される。財閥系商社は三井物産、三菱商事などが代表的だが、明治政府の政策的テコ入れもあり、なかば国策的な使命を果たしながら事業規模を拡大していった。

日本最初の総合商社・三井物産

三井物産は1876(明治9)年、日本最初の総合商社として創立された。初代社長は明治の大実業家・益田孝で、当初の職員はたったの同人だったが、すでに洋式の複式簿記を採用するなど斬新な取り組みをみせていた。

三井物産の社主であった三井家は元禄年間あたりから呉服商・両替商として実績を積み、1707年には長崎に代理店を置いて輸入品の販売を始めている。その頃から貿易立国の必要性を認識し、海外への事業展開に意欲を持っていた。そのため、創立の翌年となる1877年にはロンドンと上海、1878年に

パリ、1908年にニューヨークと、急ピッチで次々に支屈を開設していく。

創業時の業域としては、政府から払い下げを受けた三池炭坑の石炭の一手販売と政府米の買付け・輸出、軍用ラシャ・毛布の輸入などを手掛けている。その後、中国産大豆のヨーロッパ向け三国輸出の成功や、産業革命における綿花の輸入と綿糸・綿製品の輸出などで業績をさらに伸ばし、明治末頃には日本の輸出入の却%強を占めるなど、国内最大の貿易商社としての地位を築き上げた。

三菱商事の設立と起源

三菱商事の設立は三井物産より遅く、大正に入った1918(大正7)年である。源流は1870(明治3)年、土佐藩・岩崎弥太郎が設立した汽船運輸業九十九商会で、その後、1873(明治6)年に三菱商会、18

86(明治問)年に三菱社と幾度かの社名変更・組織改編を経て、1893(明治26)年に三菱合資会社となる。その三菱合資会社の営業部が三菱商事の前身である。

三菱合資会社は銅山や炭鉱の経営を事業の柱に据え、生産基盤拡充に注力していたが、日清戦争(1894年)による石炭取引の急増で営業面の強化が必要になり、それが三菱商事誕生のきっかけとなった。すなわち、三井グループは商業を中心として規模を拡大し三井物産を育てたが、三菱グループはまず銅・石炭等の製造部門が拡充し、商事部門が後続している点が対照的である。

その後、三菱合資会社は事業の発展とともに基幹部門の分離をはじめ、三菱造船、三菱製紙、三菱鉱業、三菱銀行などを次々に設立する。三菱商事は、このように形成された三菱グループの輸出入を担い、急速にグループの中心として成長していく。

最後発の総合商社となった住友商事

三井・三菱と同じく財閥系商社である住友商事は、財閥として古い歴史があるにもかかわらず、第二次大戦後に創立された最後発の総合商社である。

住友の歴史は戦国末期、京都で薬舗、書林を営んでいた住友政友の頃から始まる。粗鋼から銀を分離する製錬技術の開発に成功して大阪に進出し、1691(元禄4)年には幕府の許可を得て別子銅山を開坑する。一方で、それをもとに両替商も開業して豪商の仲間入りを果たし、「当時大阪に比肩するものなし」と言われるほどの繁栄を誇った。明治期に入ると鉱山の経営合理化・近代化を推進し、幅広い産業や金融関係の事業を展開する。

住友家の祖である住友政友は、商売を行なう上での心得を5箇条にわたって書き記した「文殊院旨意書」を残しており、それには「信用・確実を旨とし、浮利に走るな」と戒めている。この教えは住友家の家法として代々伝えられ、今日に至るまで住友商事の事業精神の根幹となっているが、同時に商事部門への参入をタブ1視する伝統が生まれた。そのため、維新後も商事部門には目もくれず、ひたすら別子銅山を中心とした製造業に集中することになる。

住友商事の前身は1919(大正8)年に設立された大阪北港会社で、終戦を迎えた1945(昭和20)年に社名を日本建設産業と改名、大陸における住友事業からの引き上げ者に職を与えるという切羽詰まった事情で商事活動に進出する。GHQによる財閥商号・商標の使用禁止が解除され、現在の社名となるのは1952(昭和27)年のことである。

    Copyright(C) 事情通になるための商社の歴史 All Rights Reserved.